Welcome to Mindful Planet

2009年10月7日水曜日

オバマ大統領の白髪が増えるわけ


 オバマ大統領の身を案じる声が増えている。
 心配性の私はオバマが大統領候補になった時点から、オバマは生き残れるのかしら、と心配で、ことあるごとに周囲の友人や知人にも問いかけると、「いまのアメリカはそれほど愚かではない」と笑われてきたのだが、最近では、この問いを笑って一蹴できる状況ではなくなってきている。
 いまのアメリカは、ケネディー大統領の暗殺に至った60年代初頭の雰囲気に酷似しているという指摘もある。
 ケネディー大統領の人気が高まるほど、その一方では、カソリック教徒が大統領になったことを良しとしないプロテスタントの人種差別主義者や保守派の敵意は深まり、大統領を個人的に冒涜する発言も増えていたそうなのだ。
 現代アメリカを代表する知識人の一人とされているトーマス・フリードマンは、数日前のニューヨーク・タイムズのコラムで、いまのアメリカの状況は、ラビン暗殺前夜のイスラエルの状況にそっくりだと、杞憂している。当時のイスラエルでは平和交渉を進めようとするラビンへの反発から、ラビンをヒトラーにたとえたり、首相としての権威を失墜させようとする右派のプロパガンダが功を奏し、暗殺を正当化する空気が盛り上がっていたという。
 アメリカでも健康保険改革を阻もうとする保守派のプロパガンダの一環として始まったオバマ叩きは激化、悪化し、中東の街頭デモさながらに、オバマ大統領の顔にヒゲをつけヒトラーやムッソリーニにみせかけた立てカンを掲げた群衆がホワイトハウス前に押しかけたりしている。
 オバマ大統領が全米の学校向けに、教育の大切さを説く演説を計画しただけで、オバマによる子供達の洗脳作戦だ、まるで北朝鮮のようだ、と保守派が騒ぎ出し、子供を登校拒否させようとした親たちも出た。
 議会でも、大統領演説の最中に、南部出身の共和党保守派の議員が「嘘つき!」と叫び大問題となったが、同議員は数日中に巨額の献金をものにした。
 同じく南部出身のジミー・カーター元大統領は、同議員の発言は人種差別に基づいたものだと断言した。
 特にフリードマンを反応させたのは、ソーシャル・ネットワーキングのサイト、フェイスブックに、オバマは暗殺されるべきか否かと問う「世論調査」が掲載され、700人近くが回答を寄せたという一件。
 フェイスブックは事態に気づくと即座にそのページをはずし、シークレットサービスが捜査を開始したが、そういうことがまかり通る風潮自体が、すでに異常で危険だとフリードマンは指摘する。
 ブッシュ政権時代だったら、そんな世論調査を掲載した本人はもとより、回答を寄せた人も根こそぎ、国内テロリストとして検挙、処罰されていたところである。
 オバマ叩きの根源にあるのは、やはり人種差別だと思う。
 進歩派の人々やメディアはオバマの大統領就任当時には「新たな人種関係の時代の幕あけだ」と喜んでいたが、それはとんでもない誤りだったのだ。
 たとえ国民の過半数が人種差別を認めなくなっても、人種差別者は確実に存在する。彼らはオバマ政権の政策がうまくいかなければ、それみたことかと批判を募らせるし、オバマ大統領が有能で、政策が成功すればしたで彼に対する怒りや憎しみを募らせる。
 どう転んでも彼らの心情を変えることはできないのだ。
 いまではアメリカの世論全体が、オバマの存在を疎む保守派や人種差別主義者の叫びに乗っ取られている。あれだけ熱狂的にオバマを支持した進歩派、一般大衆は、そうした勢力に対決しようとせず、不思議なほど大人しく沈黙を保っている。
 というか、オバマが掲げた「チェンジ」「改革」の実現を期待していた進歩派のなかには、健康保険改革の挫折、アフガニスタン戦争の長期化などから、公約とはほど遠いオバマ大統領への不満、失望も広がり、支持基盤自体が揺らいできているのだ。
 私もそのひとりで、あくまで対決を嫌い協調をもとめるオバマ大統領の弱腰姿勢には呆れ、失望している。
 せっかく民主党が過半数を掌握した、またとないチャンスで、ごり押しすれば通る議案も協調と交渉でものごとをまとめようとするから膠着状態になる。
 白人と黒人の混血で、どちらも敵にしないように常に気を配りふたつの世界で同時に生きてきたオバマ大統領にとっては、自分の立場をはっきりさせる、主張を貫くということ自体が、この人生で与えられた大きな挑戦なのではないか。
 そう考えること自体が人種差別なのかもしれないが・・
 
 
 

2009年8月23日日曜日

パトカーに乗って、学んだ2、3のこと。


 取材でカリフォルニア州フレスノに来ている。昨日は警察官のブリーフィングを見学、パトカーに同乗して市内の荒れた地域を見て回った。
ブリーフィングでは、カーチェイスについて、新たな指示が出されていた。容疑者が猛スピードで逃げたら、追うのはやめ、ヘリコプターに追跡は受け継ぐようにとのお達した。そして、できるかぎり、ピットするようにと。ピットとは、追跡する車と横並びになって、前輪のあたりにわざと車の角をぶつけるテクニック。ぶつけられた車は横すべりしてストップしてしまうのだそうだ。だが、走行速度が45マイル以上だと、車は横すべりせず横転、回転を繰り返し大事故になるので、容疑者の車がスピードをあげて逃げ出す前にピットしなければならない。
 でも、ピットの訓練を受けた人は?という指揮官に問いに手を挙げたのは、30人くらいいた警察官中、数人程度だった。。。
 フレズノ警察はつい2日ほど前に、一斉検挙でギャングを200人くらい捕まえたという。ヒスパニック、ブラック、アジア系、白人と人種混合地域で、人種ごとにギャングが結成されているそうだ。しかし応する警察官はほぼ全員が白人だった。
 しかし、警察官たちによれば、パトロール中に出動を命じられて一番緊張するのは、DV、ドメスティックバイオレンス(家庭内暴力)だ。事件の概要が行く前に分かる他の911と違って、通常DVの911は近所の人からの通報や、被害者からの短い通報で詳細は不明。
行ってみたら何がおこるか分からない。暴力を振るっていた夫を捕まえようとしたら、夫を警察に連行されたくはない妻が襲いかかってきたり、息子に飛びかかられたりといったことも少なくないのだそうだ。彼らによるとDVを起こす人たちは他の犯罪予備軍でもあり、DV検挙を徹底すれば、犯罪率はだいぶ減るのだそうだ。
 パトカーの運転席の隣にはコンピューターが据え付けられていた。ディスパッチの詳細も今はテキストメッセージで読む仕組みになっていた。
携帯電話の使用による事故多発が問題化しているなか、パトカーの警察官たちはコンピュータ操作しながら運転してるのだから、危ないこと極まりない。
 ディスパッチでは、ジャンパーがまた出現、というのもあった。そこの高速道路の陸橋から飛び降りると毎日予告してくる911があるが、絶対飛び降りないんだよ、と運転していた警察官のJ君は笑っていたが、そのうちあちこちからサイレンを鳴らしながらパトカーが高速に向け走っていた。今回は、本当に飛び降りでしまったようで、高速はその後、数時間、一部通行止めになっていた。
 J君は警察がメディア向けに用意するだけあって、なかなかハンサムな好青年。高卒でマリンになりいったん除隊した直後に9−11が起こり、再志願してイラクにも行ったそうだ。
 どうしてわざわざイラクに行ったの?と聞いたら、一緒に訓練を受けた仲間がみんなイラクに送られるのに自分だけ行かなけれb罪の意識を感じて、生きていけないと思ったのだそうだ。マリンの教育(洗脳)効果はあっぱれ、というところかもしれない。
 アメリカの警察にはこうした軍隊あがりの人が多い。
 カメラマンはJ君においしいレストラン情報を聞き出そうとしていたが、はっきりした返事が得られず、じゃあ、おいしいドーナツショップは?と聞いたら、即座に3店の名があがった。
 アメリカ人がよくジョークにする警察官とドーナツの深い仲は神話ではなく現実だったのだ。
 警察官の隣でビデオをまわしていたカメラマンはやっぱり、警察官と一緒だと、パワフルになった気がするなあ、などと喜んでいたが
中からではドアが開かない後部の容疑者席に乗せられた私にとっては、あまり気分のよいパトロールではなかった。
 

2009年8月9日日曜日

本当は恐ろしいアメリカの真実



 アメリカの大統領選の経緯もあって、予定より遅れてしまった新刊がようやく講談社から出版された。タイトルは「本当は恐ろしいアメリカの真実」。出版社の発案で、最初はちょっと「恐ろしい」タイトルでは、と思ったのだが、このところのアメリカの国内の動きをみると、確かに、間違いなくアメリカは恐ろしいことになっている。
 革新政権、しかも黒人大統領の誕生から数ヶ月、ブッシュ政権下の8年間の安住で牙を錆びさせていた保守派、人種差別主義者、キリスト教右派の溜まった鬱憤がここに来て爆発したようで、アメリカ人の対立、分裂は急速に悪化、いまでは内戦さながら。
 もっかの問題の焦点は健康保険制度改革で、真実を探れば、国民に高い保険料をふっかけながらいざ病気になると難癖をつけて医療費支払いを拒否するという詐欺商法で巨額の富を蓄えてきた営利の健康保険産業が、現状を変えられたくないから、豊富な資金を投じて保守派の政治家を動かし、世論操作しているのは見え見えだ。
 そら恐ろしいのは、「政府支給の健康保険は、高齢者を早死にさせ、中絶を促進させるための政府の陰謀」、「公的保険の導入を許せばアメリカは社会主義国に変えられてしまう」といった、他のどこの国でもアホかと一蹴されるような脅しの論理を間に受けるアメリカ人の単純さと知能程度の低さ。
 アメリカの大企業や富裕層は、巧妙な屁理屈で、本当は貧富の差の対立を、イデオロギー的、または宗教的な対立にすり替えることにかけては天才的なのだ。
 保守派は草の根運動にみせかけたプロパガンダ戦略で、健康保険問題をめぐる市民討論会は保守派が討論会妨害のために派遣するエセ市民に乗っ取られ、健康保険改革に賛成の議員は、暗殺の脅迫状を受けたり、似顔絵の立て看を縛り首にされたり。実際に暴徒に暴力を振るわれた民主党議員もいる。アメリカの民主主義は臨死状態だ。
おかげで本当は公営健康保険制度で最も助かるはずの庶民や、いままで政府支給の健康保険である高齢者向け公的保険メディケアなどの恩恵を受けてきた高齢者たちの多くが、健康保険改革に及び腰になっている。
 オバマ大統領に関してもフォックス系のテレビや保守派のラジオトークショーなどではヒトラーや悪魔並みの扱い、または昔ながらの人種主義者の表現でモンキーにたとえられることが多くなってきた。
 アメリカをユナイテッドしたいと訴えて当選したオバマ大統領だが、残念なことに、かえって白人、保守派の恨み憎しみを募らせ、アメリカは不穏な暗雲に包まれてしまった感。
 ・・というわけで、保守革新の対立、人種間の対立、宗教上の対立、アメリカの分裂の根底にある問題を探ったのが今回新刊発売された拙著。
 アメリカ・バッシングではなく、アメリカに憧れ、渡米した私が観察、取材、考察した素顔のアメリカの紹介です。ご一読の上、ご感想を。

2009年7月27日月曜日

ニューメキシコの天球


久しぶりにニューメキシコに行ってきた。私の住むバンクーバーは雨が多く緑が濃い水と木のイン(陰)の地なら、ニューメキシコは陽光が燦々として乾燥した大地や鉱物のパワーを強く感じるヤン(陽)の地。まったく別の星に来たようなすがすがしさがある。
 緯度が高いせいなのか湿度が低いせいなのか、ニューメキシコの空は実に立体的な三次元の天界。陽光が射す向きもはっきりしているし、雨も局地的で、じょうろで水をかけたように、暗雲からシャワーが降っているのが見て取れる。
 こうした豪快な空の下にいると、自然を大いなる神秘、すべての創造主と信じるネイティブの人たちの信条に共感を覚え、人間界の右往左往も様々な問題もちっぽけでどうでもよいことに思えてくる。
 仕事柄もあって普段の都市生活のなかでは、社会や政治の動きを常に「監視」していないと落ち着かないニュース・ジャンキーの私も、ホテルに戻ってもテレビなどつける気はしなくなる。そして世界の時事・事象に無頓着になると、人間界がどうあっても、自然は営みを続け、天下太平でいることに気づく。
 気候変動だ、地球温暖化の危機も、人類の存続の可否には影響するかもしれないが、これまでもそうしてきたように、地球は長い月日のなかでバランスを取り戻していけるのではないかと思えてくる。
 今回の旅の目的は、私が尊敬するコチチ族の長老に会うことだった。健康を損ねていると聞き、心配していたのだが、長老はきらきら輝き少なくともその精神は健康そのものにみえた。
 ネイティブのコミュニティーではどこでも糖尿病の蔓延が深刻な問題で、残念なことに、長老も最近になって糖尿病と診断されたのだそうだ。
 初婚の妻を糖尿病に奪われた長老は、数年前に再婚した相手も糖尿病と診断され、2度と妻を奪われたくないと、ヘルシーな食生活に向け、畑づくりも再開していた。が、2年前に心臓を患い、家にいることが多くなり、太ってしまったようだった。
 そういえば私が3年前から習っているイン・レイ気功は、臨床試験で糖尿病の治癒効果が実証されたところだ、と思い出したのは帰ってきてからだった。
 次の旅では、お世話になってきた長老に糖尿病治癒の気功の体操を伝授しようと思っている。

2009年7月12日日曜日

明るみに出た、ブ大統領の陰謀


 ブッシュ政権が9−11のどさくさにかこつけて、テロ防止の名目で大々的な国内での諜報活動を実施していたことが明るみに出て問題になっている。
 憲法違反の国内諜報が行われていたことはすでに2005年にメディアのスクープでばれていたが、以前に知られていた以上の規模で諜報活動は行われていた。これまでは、その非は、活動の合法性に太鼓判を押した法務省やホワイトハウスのタカ派の法律顧問にある、とされていた。同活動が法的根拠とした特別法が失効する直前、当時大統領の法律顧問だったアルバート・ゴンザレスがその延長承認のサインをもらうために、入院中で手術直後のアッシュクロフト法務長官の病室に押しかけ、麻酔もしっかり覚めやらぬアッシュクロフトにサインを迫ったものの拒否されていたことは明るみに出ていたからだ。が、今回公開された文書から、実はその背後では、ブッシュ大統領自身がアッシュクロフトに電話をかけ、承認を迫っていたことが明らかになったのだ。
 これまで、ブッシュ政権の陰謀といえば、ダースベーダーのチェイニーが悪玉で、ブッシュ政権は傀儡政権に過ぎない、という見方も少なくなかったが、ことあるごとにアホのふりをしてとぼけてすませていたブッシュ大統領自身も実際にはしっかり陰謀の一端を担っていたわけだ。
 またこれとは別に、チェイニー副大統領の指示で、CIAが議会に報告せずに、さらにはオバマ政権下で新に就任したペネッタCIA長官にも知らせず、つい先月まで極秘のプログラムに従事しており、それを知ったペネッタ長官が即刻同プログラムを中止させ、議会に報告したことも明らかになり、問題になっている。
 ニクソン大統領を辞任に追い込んだウォーターゲート事件の「大統領の陰謀」のなかみは、実は民主党の選挙活動の実態を探ろうと諜報活動に過ぎなかったことを考えれば、ブッシュ・チェイニーの陰謀は比較にならない大犯罪だ。
 もちろんリベラル派は責任追及の捜査を開始するようオバマ政権に迫っているが、オバマ大統領としては、この問題で共和党との対立が激化したら、念願の健康保険改革に関する法制化もストップすることは目にみえているから、ひとまずは、ことを荒立てたくない構えであることは同情の余地がある。
 だが、ブッシュ大統領自身が憲法違反の諜報活動をごり押ししていた証拠が公表されても、メジャーのメディアでは報道すらされていないのはどういうわけなのか、理解しがたい。
 アメリカのメディアは、あいかわらずマイケル・ジャクソン報道に明け暮れていて、それどころではない。かつては社会の番犬を辞任していたメディアは、完全に金権アメリカに飼い慣らされお座敷犬に堕落し、報道=娯楽。
 情けない。
 
 
 

2009年7月5日日曜日

カナダで祝ったアメリカの独立記念日



 私はつくづくヘソ曲がりに生まれついているらしく、アメリカにいたときには無視してきた7月4日のアメリカ独立記念日を、今年はカナダでカナダに住んでいるアメリカ人の連中と祝った。
 祝ったといってもアメリカ人流に、集まって屋外でバーベキューを食べながら、おしゃべりの興じるというだけだ。
 バーベキュー・パーティというと、日本だったら、お肉や魚介類から野菜まで、副菜も数々ならんで豪華絢爛だが、アメリカ人のバーベキューは、たいがいはできあいのハンバーグーやソーセージを焼いて、ハンバーガーやホットドッグにして食べるだけ。持ち寄る副菜も、ポテトサラダやマカロニサラダ、デザートはブラウニーかクッキーといったところだ。
 さて、カナダに住むことにしたアメリカ人は、外見はもちろんだが、なかみもカナダ人に近い気がする。
 アメリカ人が我先に猪突猛進するタイプAなら、カナダ人はおっとり構えた協調志向のタイプB。
 アメリカ人のパーティだと、必ず、場の注目を独占したがるようにひとりで喋りつづける人がいたり、テニスのマッチのように会話のテンポが速くて、すぐ議論になったりするのだが、バーベキューに集まった面々は一様にメローで、なごやかだった。
 集まったのはタートルレイク公園内にあるタートル湖のビーチ。もちろんアメリカの誕生日の集いなど開いているのは私たちのみで、隣のグループは、チェ・ゲバラやキューバーの大きな旗を翻していたのは、カナダらしかった。
 アメリカでは7月4日は独立記念日の祝日で、いたるところで、野外コンサートが開かれ、暮れてからはどこでも花火大会でにぎわう。
 なかでも最大規模として知られているのはニューヨークのイーストリバーも艀から打ち上げられる花火だ。
 ニューヨークにいたときは川向こうのブルックリンに住む友人たちと一緒に、彼らが住むビルの屋上から7月4日の花火を楽しんだこともあるが、ニューヨークではこうした大イベントの問題は、交通規制と交通渋滞。
 地下鉄は夜になると物騒だから車で、と思えば、渋滞とパーキング探しでたどり着くのに2時間以上かかってしまうから、つい出かけるのがおっくうになる。
 後半はイーストリバーから3ブロックほどで、花火見物には絶好のロケーションに住んでいたのだが、そうなると押し寄せてくる観光客の波に飲み込まれたくないから、外に出ないか、
連休に入る前から、ニューヨークを離れることも多かった。
 大晦日もそうだし、サンクスギビングもそうだが、世界からニューヨークに人が集まる日にはニューヨークにはいない、というのがクールなニューヨーカーの心得で、私たちもそうしていた。
 それでいて、何千マイルも離れてみると、懐かしく、イーストリバーの花火も今年はテレビ中継でみた。
 花火が照らすマンハッタンの摩天楼の夜景は、エンパイヤーステートビルも国旗の3色のブルー・レッド&ホワイトにライティングされ綺麗だが、レゴ細工のようにはかなくもみえた。
 住んでいたときには気づかなかったが、ニューヨーク暮らしだと、いつも目線が高層ビルに行くから、上を向いて歩きがちで、だから肩も凝る。
 巨大ビルの間をちょこまか歩き、高層アパートでタテに重なって暮らしていると、どうしても考え方もせせこましくなってくる。
 花火を見終えた頃には、当初のニューヨークへの郷愁も消え、よくもあんなところに住んでいたものだ、とあらためて思ってしまった。
 

2009年7月2日木曜日

Twitter & ホワイトハウス・ライブ


 北米ではマスメディアに変わってTwitter, Facebook, Flikr, MySpaceといったソーシャルメディアが情報流通の主流を担う時代が来たようだ。Twitterなど、私も人に誘われて登録をしたものの、他人の動向を逐一追跡するなんて、まるでストーカーみたい、とあまり興味も湧かず、しばらく何もせずにいた。けれど、最近ではテレビのニュースなどもTwitterから拾った話題を報道していたり、誰もが大騒ぎしているので、頻繁にチェックしだしたら、結構面白い。というか、いわば伝言版だから、情報源としては極めて便利であることに気づいた。関心がある分野の人々をフォローしていれば、彼らが注目するめぼしいニュースをリアルタイムで報告してくれるのだから、ボランティアのリサーチ・アシスタントの群団を雇ったようなものだ。
 いま見たばかりのホワイトハウス・ライブもTwitterでヒラリーが教えてくれた。たぶん公式ではなくヒラリーのファンが運営しているTwitterだろうけれど、リンクされているサイトはいつも公式情報源だ。
 今日のホワイトハウス・ライブはオバマ大統領の記者会見で、一流企業のビジネスリーダーたちをバックに、イノベーションが企業を成長させると謳う、グリーン・ディール自画自賛のピッチだ。
 記者から、「でも小規模企業はどうなるのか」と質問がくると、オバマ大統領は「こした大企業だって最初は小企業だったけれどイノベーションで大企業になったのだから同じこと。小企業にとってもエネルギーコスト20%の節約になる」と応えていた。
 ホワイトハウス・ライブを放映していたサイトは政府のニュースを集めたサイトで、ビデオを見ながら、その横の画面でチャットもできる。「以前は政治には無関心だったけれど、最近は病みつきよ」などというコメントもあった。
 オバマ政権はたぶん歴代の政権のなかでも最も広報能力にたけていると思う。
 本人自身が、大統領就任にあたって、ブラックベリーを手放すのは嫌だとだだをこね、セキュリティー・サービスの方針を変えさせたくらいハイテク、情報ジャンキーで、リアルタイムの情報伝達のパワーや重要性を知っているからだ。ソーシャルメディアやメール、ビデオニュースの活用ぶりはたいしたものだ。
 ホワイトハウスのサイト、www.whitehhouse.govに行けば、誰でもTwitter、Facebook, YouTubeなどで
米政治の先端を知ることができる。

2009年6月19日金曜日

バンクーバーの人たち

 バンクーバーに拠点はおいたものの、ロケや出張で出かけたり、シアトルの大学で教えていたりと、結局はアメリカにいることが多く、地元の人と知り合う機会があまりない。ので、バンクーバーにいるときには、積極的にネットワーキングに励むことにした。
 というわけで、様々な集いに顔を出しているうちに気づいたことがふたつある。ひとつは、バンクーバーは本当にインターナショナルな都市だ、ということだ。今週だけでもロシアから着いて3日というMBA、オランダから着いて2週間というエンジニア、エルゴノミックなコンピューター・キーボードを開発しているというメキシコ人、ドイツから来たばかりのビデオエディター、ハンガリーから来たプログラマー・・と様々な文化背景と経歴をもつ人たちに会った。
 私は人種のるつぼ、移民の集結地とよく表されるニューヨークにも10年間住んでいたけれど、ニューヨークの場合には、文化やビジネスを動かす大勢は、いわゆるWASPやユダヤ系の白人だし、社交の場でも、他の人種はマイノリティ。
2年間住んだシアトルにいたってはもっと白く、私がいたノース・シアトルなどでは、レストランに行っても、見まわせば、たいがいは白人でないのは私だけだった。シアトルでもサウス・シアトルの方に行くと、ベールをかぶったイスラム教圏からの人々なども多く人種は雑多になるが、住み分けがはっきりしているのだ。
 アメリカの「国際都市」とバンクーバーの国際度の大きな違いは、バンクーバーの方が受け入れる移民の人種が多様であるということだ。アメリカが毛嫌いするイラン、そして南アジアからの移民も多い。我が家の家主もスリランカ人で、宅地開発のデベロッパーとして成功した人だ。
 もうひとつ気づいたのは、バンクーバーはコンサルタントばかりだ、ということだ。
 投資コンサルタント、保険コンサルタント、税理・会計コンサルタント、経営コンサルタントなどの他、ビジネス・コーチ、パーソナル・コーチと称する人たちも多い。大きな産業もなく、大会社も少ない方、必然的に自営業が多くなるのだろうが、コンサルタントの称する人々はそれなりに風采もちゃんとしていて、コンサルティング業で生計が成り立っているようなのだ。
 テレビ・映画業界で働く女性のネットワーキング・グループの朝食勉強会の今月のゲストスピーカーは、なんと整理整頓専門のコンサルタントだった。
 クライアントに整理整頓の仕方や美徳を教授するだけでなく、実際に家まで出かけ、家の中やクロゼットのなかを視察、捨てるべきもの、なぜ捨てられないのか、などコンサルティングしていくのだそうだ。
 たいがいはコンサルティングは数回にわたるそうで、この不況のさなか、それに1時間300ドル、600ドルといった料金を払うクライアントがたくさんいるというのだから、不思議な街である。
 日本でもそうじ本はずいぶん流行っていたし、物理的な整理整頓が心や頭の整理整頓につながるのは分かるが、それにしても・・・
 ビジネス・コーチやコンサルタントにしても、不況だと真っ先に仕事がなくなりそうなものだが、ビジネスに行き詰まったり、新たな顧客開拓の必要に迫られる人も多いから、クライアントにはことかかないらしい。
 世界1住みやすいといわれるバンクーバーは、新参者のマグネットで、家族や長年の友達を身近に持たず、ちょっと何かを相談する相手もいない人が多いから、コンサルタントがその代役、そして心理相談のセラピスト代わりにもなっているのかもしれない。
 昨日も、知人に、世界中で話題のビジネスコンサルタントがアメリカから「儲けを倍増させる」講習会に来るが、朝だけ受付やってくれたら、500ドルの1日講習に無料で参加できる、と誘われ、物見遊山で出かけてみた。
 話の内容は、セールス心理学と、ニューエージのポジティブ思考をあわせたようなものだったが、千人近くの聴衆を集めていた。社員を何人もまとめて送り込んできている企業も少なくなかった。
 フットボールの開戦前のコーチの激励のようなもので、セールスマンたちにとっては具体的なテクニック取得もさることながら、自分を奮起させてくれるカンフル剤を求めているのだろう。
 スピーカーは確かに話術にはたけていたし、内容も面白かったが、残念ながらゴールが結局は金儲けに留まり、社会や世界のためにもなろう、という発想はまったくないようだったので、早々に退散した。
 自己中心的に利益を求めるよりは、何かのかたちで社会や世界のためになるようなことをしていれば、自然の創造主たる大いなる神秘が経済的なめんどうも見てくれる、という私の信条とは相容れない世界だった。


 

 

2009年6月11日木曜日

ワシのアーバンライフ


 バンクーバーの友人でフォトグラファー兼ヒーラーのオジャさんがブログでバンクーバー在住のワシを紹介しているのを見て、先週、シアトルのスチュアート公園にワシ見物に行ったことを思い出した。
 私たちはワシントン湖岸に広がるスチュアート公園のすぐそばに住む夫の叔父叔母宅をシアトルの拠点にしている。叔父はコールドフージョンを研究していた物理学者で叔母は生物学者だった。アメリカの大学教授は高給職とはいえないが年金がしっかりしているので、引退してからは悠々自適の生活で、ボランティア活動に明け暮れており、スチュアート公園の自然保護グループのメンバーでもあり、公園の生態系には詳しい。
 叔母の話によればスチュアート公園の森にはもう10年も前から高い枝にワシがりっぱな巣をこしらえた木があって、ずっと観察・保護されてきたという。最近ではカップルとみられる2羽のワシが棲んでいて、ヒナが2羽生まれ、カップルは子育てに励んでいる。鳥類のなかでは王様格のワシといえども、巣にヒナを放っておけば九官鳥やら他の鳥の餌食にされかねないので、どちらかが必ず巣に留まり、交代でどこかに出かけていってはエサを運んでくるのだという。夕方に夫婦のどちらかがエサをくわえて戻り、ベビーシッター役を交代することが多いので、ヒナの様子も見られるかもしれない、というので7時頃にみんなでワシの家族に会いに出かけた。
 ワシが棲む木は森の端で芝生に面していたが、一帯はわざと芝刈りされていない。人がやたらに木に近づいてはワシの迷惑になるかもしれない、という公園側の配慮だ。1年に一回はボーイスカウトのグループがこの一帯でサマーキャンプを開くが、今までは、少年たちは特に問題になるような行動は起こしていないそうだ。
 ほら、あそこよ、と叔母に指さされても肉眼では分からなかったが、カメラの望遠レンズを通してみると、たしかに、小枝を綿密に交差させ籠のようにしつらえた巣があって、ワシが白い頭だけをのぞかせていた。
 その巣はこまめにワシが修復はしているものの基本構造は10年以上そのままらしく、ワシは優れた建設エンジニアということになる。2年前にシアトルもバンクーバーも大嵐に襲われ、大木がばたばた倒れたり大洪水になったり、このワシの巣もダメージを受けたが、その後、ワシは自力でしっかり修復したそうだ。
 ちなみに日本では白頭ワシとよばれるワシはアメリカではバルド・イーグル、つまり禿げワシと呼ばれている。
アメリカ合衆国のシンボルなのだから、もう少しましな命名はなかったのかとも思う。頭が禿げているわけではないのだし。
 ワシは実はアメリカ大陸の先住民族、アメリカ・インディアンが創造主の遣いとして特に尊重してきた鳥だ。アメリカ合衆国はそもそも建国の父達が先住民族が実践していた合衆国制度と議会制民主主義に感心してその理念や仕組みを借りて建国した国。ついでに先住民族が崇拝するワシもシンボルにしたのだろう。
 アメリカ・インディアンの文化ではいまでもワシの羽根は人を真実の生き方に導く、いちばんのお守りだ。私はニューヨーク州北部のモホーク族の春祭りで、長老が自然に感謝を捧げる祈りの言葉を述べ、祈りが届けばワシがやってくる、と言うと、本当にワシがどこからともなく飛来し会場の上空を何回か旋回して去っていったのをみて感動したこともある。
 最近ではアメリカのあちこちの都市でもワシがみかけられるようになったが、アメリカ・インディアンの言い伝えによれば、これは吉兆ではない。空高く舞い、人里離れた高山に生息するはずのワシが人里に降りてきたら、それは自然の調和とバランスが崩れているという創造主からのお告げなのだ。
 ちなみに、ワシの狩猟や捕獲はいまでも連邦法違反で、アメリカ・インディアン以外は、ワシの羽根を拾って所有することもアメリカでは違法行為だ。ワシは人には手の届かない遠くであがめるべき存在なのである。

 
 

2009年6月8日月曜日

ストロベリー・ローズ・ムーンに手作りのギー

 アーユルヴェーダ(インドの伝統的な健康学)に関心をもつ人たちが集まるグループが主催した、手作りギーのワークショップに参加してみた。
 アメリカ・インディアンのヒーリングやハーブには結構詳しくなったけれど、インディアン(アメリカでインディアンといえばインド人を指す)の伝統療法には全く無知なので、アーユルヴェーダには興味があった。
 ギーも健康に良いと人から聞き、市販のギーをひと瓶買っては見たけれど、何でできているかも使い方もよく分からずそのままになっていたので、学びのよいチャンスと思ったのだ。
 サリーを着たインド人の女性が・・という予想に反して講師はイギリス英語を話す白人の女性で、母親のギーづくりを見て育ったというインド人風の若い男性(だったら、何で習いに来てたの?)と私の他は全員、参加者は白人の女性。北米のニューエージ関連のイベントの参加者はなぜか、ほとんど白人女性なのだ。
 乳脂肪からタンパク質などを除いて純粋な油分だけにしたギーは、ハーブの薬効分を細胞に浸透させやすいキャリア・オイルとしてアーユルヴェーダで重要視されている油。アーユルヴェーダの体質分類でいうと「火の性質」を減少させるので、胃炎など炎症系の癒しにも向き、やけどの手当などにも最適、などという説明がまずある。
 6月の月は、ストロベリー・ローズ・ムーン。イチゴが実り、バラが美しく開花する季節に、満ちた月のエネルギーをもらって、ハーブ入りのギーを手作りしましょう、
というのがワークショップの狙いだそうだ。
 まずは、コリアンダー、クーミンとフェンネルの種を軽くから煎りしてからすり鉢ですって粉にする。
 叡智、浄化、トランスフォメーションを意味するサンスクリット語の祈りの歌を歌いながら、みんなで一緒にすり鉢でする。
 そして、次は乾燥させたバラの花びらも同様にすり鉢で粉末にする。ローズは紅い顔料のようになり、エレガントな香りを漂わせる。
 アメリカ・インディアンの薬草療法でも、草を摘んだり、薬に調合したりする際には祈りの歌を歌う。共に、妙薬を授けてくれた自然への感謝を伝えるものだ。
 古代から伝わる人の自然の関わり方には共通性があって優しい。
 ちなみにバラはハーブティーにもローズ・ウォーターにもできるが、オーガニックに限る。市販の切り花などは農薬漬けなので薬効どころか猛毒だ。
 ワークショップの会場となったスタジオには世界各国から集められたすり鉢のコレクションがあった。
 穀類を潰して粉にしたり、植物の実や種や葉っぱをすり潰してスパイスや薬をつくるという作業は古代から世界中で行われてきた。
 すり鉢は女性、すりこぎは男性、陰陽のエネルギーの調和だ。
 さて、ギー作りの材料は、以外なことに市販のバターだった。
 たぶん伝統製法とはいえないのだろうけれど、ワークショップではオーガニックの無塩バターを鍋に入れ火にかけただけだった。
 バターが溶けて煮立つ音に耳を澄ませながら、頃合いをみて火を止め、浮いてきたカスをていねいに取り除けばできあがり。
 カスといってもクリームのようなもので、ワークショップでは砂糖よりヘルシーな糖分として最近流行りだしたメスキートの粉を混ぜると、それだけでソフトキャラメルのようなおいしいお菓子になる。
 できたてのギーは美しい金色の透き通った液体で、甘い香りがする。それをガラスの保存容器に入れ、好みのハーブを混ぜてかきまぜ、よくさましてからフタをする。
 粉にしたローズの花びらを小さじ半分くらいいれてみたら、きれいな、まさにロゼ色のギーができた。
 きちんと不純物を取り除いて作ったギーは常温で10年でも持つそうだ。
 

2009年6月4日木曜日

オバマ大統領の中東スピーチ


アメリカでは、オバマ大統領が中東訪問で、歩み寄りで平和な世界を築こう、という素晴らしい演説をした、というのが、今日の一番のニュース。でも、いくら正論で中立してても、あんなに言いたい放題世界に向けて言っちゃって、大丈夫なの?イスラエルのタカ派などはきっと大憤慨しているだろう、と心配にもなる。
 オバマ大統領は自分自身をマット(犬の雑種をさす)と呼んだこともある。自らがいわばアメリカでは歴史的に敵対してきた白人と黒人のメイク・ラブで生まれたオバマ大統領は、DNAのレベルからラブ&ピースが刻み込まれているようで、国内政治でも、意固地なまでに相反する勢力の歩み寄りを求める。
 それで、実際に、長年燃費規制に絶対反対してきた米自動車産業とその宿敵の環境保護団体を、地球温暖化防止に向けた燃費規制引き上げで合意させたり、この調子だと保険産業や製薬産業などの抵抗で90年代にビル&ヒラリー・クリントンが断念っっさるをえなかった、健康保険改革も実現するかもしれない。
 大統領就任から100日ちょっとで、アメリカは表層をみれば急変しつつある。しかし、落ち着いて考えてみれば、大統領選の国民投票率でいえば、昨年の結果は接戦で、国民の半数近くは鬱憤を溜めているのだろうから、手放しで喜んでもいられない状況ではある。

以前のブログは http://blog.goo.ne.jp/pressbox