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2009年6月19日金曜日

バンクーバーの人たち

 バンクーバーに拠点はおいたものの、ロケや出張で出かけたり、シアトルの大学で教えていたりと、結局はアメリカにいることが多く、地元の人と知り合う機会があまりない。ので、バンクーバーにいるときには、積極的にネットワーキングに励むことにした。
 というわけで、様々な集いに顔を出しているうちに気づいたことがふたつある。ひとつは、バンクーバーは本当にインターナショナルな都市だ、ということだ。今週だけでもロシアから着いて3日というMBA、オランダから着いて2週間というエンジニア、エルゴノミックなコンピューター・キーボードを開発しているというメキシコ人、ドイツから来たばかりのビデオエディター、ハンガリーから来たプログラマー・・と様々な文化背景と経歴をもつ人たちに会った。
 私は人種のるつぼ、移民の集結地とよく表されるニューヨークにも10年間住んでいたけれど、ニューヨークの場合には、文化やビジネスを動かす大勢は、いわゆるWASPやユダヤ系の白人だし、社交の場でも、他の人種はマイノリティ。
2年間住んだシアトルにいたってはもっと白く、私がいたノース・シアトルなどでは、レストランに行っても、見まわせば、たいがいは白人でないのは私だけだった。シアトルでもサウス・シアトルの方に行くと、ベールをかぶったイスラム教圏からの人々なども多く人種は雑多になるが、住み分けがはっきりしているのだ。
 アメリカの「国際都市」とバンクーバーの国際度の大きな違いは、バンクーバーの方が受け入れる移民の人種が多様であるということだ。アメリカが毛嫌いするイラン、そして南アジアからの移民も多い。我が家の家主もスリランカ人で、宅地開発のデベロッパーとして成功した人だ。
 もうひとつ気づいたのは、バンクーバーはコンサルタントばかりだ、ということだ。
 投資コンサルタント、保険コンサルタント、税理・会計コンサルタント、経営コンサルタントなどの他、ビジネス・コーチ、パーソナル・コーチと称する人たちも多い。大きな産業もなく、大会社も少ない方、必然的に自営業が多くなるのだろうが、コンサルタントの称する人々はそれなりに風采もちゃんとしていて、コンサルティング業で生計が成り立っているようなのだ。
 テレビ・映画業界で働く女性のネットワーキング・グループの朝食勉強会の今月のゲストスピーカーは、なんと整理整頓専門のコンサルタントだった。
 クライアントに整理整頓の仕方や美徳を教授するだけでなく、実際に家まで出かけ、家の中やクロゼットのなかを視察、捨てるべきもの、なぜ捨てられないのか、などコンサルティングしていくのだそうだ。
 たいがいはコンサルティングは数回にわたるそうで、この不況のさなか、それに1時間300ドル、600ドルといった料金を払うクライアントがたくさんいるというのだから、不思議な街である。
 日本でもそうじ本はずいぶん流行っていたし、物理的な整理整頓が心や頭の整理整頓につながるのは分かるが、それにしても・・・
 ビジネス・コーチやコンサルタントにしても、不況だと真っ先に仕事がなくなりそうなものだが、ビジネスに行き詰まったり、新たな顧客開拓の必要に迫られる人も多いから、クライアントにはことかかないらしい。
 世界1住みやすいといわれるバンクーバーは、新参者のマグネットで、家族や長年の友達を身近に持たず、ちょっと何かを相談する相手もいない人が多いから、コンサルタントがその代役、そして心理相談のセラピスト代わりにもなっているのかもしれない。
 昨日も、知人に、世界中で話題のビジネスコンサルタントがアメリカから「儲けを倍増させる」講習会に来るが、朝だけ受付やってくれたら、500ドルの1日講習に無料で参加できる、と誘われ、物見遊山で出かけてみた。
 話の内容は、セールス心理学と、ニューエージのポジティブ思考をあわせたようなものだったが、千人近くの聴衆を集めていた。社員を何人もまとめて送り込んできている企業も少なくなかった。
 フットボールの開戦前のコーチの激励のようなもので、セールスマンたちにとっては具体的なテクニック取得もさることながら、自分を奮起させてくれるカンフル剤を求めているのだろう。
 スピーカーは確かに話術にはたけていたし、内容も面白かったが、残念ながらゴールが結局は金儲けに留まり、社会や世界のためにもなろう、という発想はまったくないようだったので、早々に退散した。
 自己中心的に利益を求めるよりは、何かのかたちで社会や世界のためになるようなことをしていれば、自然の創造主たる大いなる神秘が経済的なめんどうも見てくれる、という私の信条とは相容れない世界だった。


 

 

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