Welcome to Mindful Planet

2009年8月23日日曜日

パトカーに乗って、学んだ2、3のこと。


 取材でカリフォルニア州フレスノに来ている。昨日は警察官のブリーフィングを見学、パトカーに同乗して市内の荒れた地域を見て回った。
ブリーフィングでは、カーチェイスについて、新たな指示が出されていた。容疑者が猛スピードで逃げたら、追うのはやめ、ヘリコプターに追跡は受け継ぐようにとのお達した。そして、できるかぎり、ピットするようにと。ピットとは、追跡する車と横並びになって、前輪のあたりにわざと車の角をぶつけるテクニック。ぶつけられた車は横すべりしてストップしてしまうのだそうだ。だが、走行速度が45マイル以上だと、車は横すべりせず横転、回転を繰り返し大事故になるので、容疑者の車がスピードをあげて逃げ出す前にピットしなければならない。
 でも、ピットの訓練を受けた人は?という指揮官に問いに手を挙げたのは、30人くらいいた警察官中、数人程度だった。。。
 フレズノ警察はつい2日ほど前に、一斉検挙でギャングを200人くらい捕まえたという。ヒスパニック、ブラック、アジア系、白人と人種混合地域で、人種ごとにギャングが結成されているそうだ。しかし応する警察官はほぼ全員が白人だった。
 しかし、警察官たちによれば、パトロール中に出動を命じられて一番緊張するのは、DV、ドメスティックバイオレンス(家庭内暴力)だ。事件の概要が行く前に分かる他の911と違って、通常DVの911は近所の人からの通報や、被害者からの短い通報で詳細は不明。
行ってみたら何がおこるか分からない。暴力を振るっていた夫を捕まえようとしたら、夫を警察に連行されたくはない妻が襲いかかってきたり、息子に飛びかかられたりといったことも少なくないのだそうだ。彼らによるとDVを起こす人たちは他の犯罪予備軍でもあり、DV検挙を徹底すれば、犯罪率はだいぶ減るのだそうだ。
 パトカーの運転席の隣にはコンピューターが据え付けられていた。ディスパッチの詳細も今はテキストメッセージで読む仕組みになっていた。
携帯電話の使用による事故多発が問題化しているなか、パトカーの警察官たちはコンピュータ操作しながら運転してるのだから、危ないこと極まりない。
 ディスパッチでは、ジャンパーがまた出現、というのもあった。そこの高速道路の陸橋から飛び降りると毎日予告してくる911があるが、絶対飛び降りないんだよ、と運転していた警察官のJ君は笑っていたが、そのうちあちこちからサイレンを鳴らしながらパトカーが高速に向け走っていた。今回は、本当に飛び降りでしまったようで、高速はその後、数時間、一部通行止めになっていた。
 J君は警察がメディア向けに用意するだけあって、なかなかハンサムな好青年。高卒でマリンになりいったん除隊した直後に9−11が起こり、再志願してイラクにも行ったそうだ。
 どうしてわざわざイラクに行ったの?と聞いたら、一緒に訓練を受けた仲間がみんなイラクに送られるのに自分だけ行かなけれb罪の意識を感じて、生きていけないと思ったのだそうだ。マリンの教育(洗脳)効果はあっぱれ、というところかもしれない。
 アメリカの警察にはこうした軍隊あがりの人が多い。
 カメラマンはJ君においしいレストラン情報を聞き出そうとしていたが、はっきりした返事が得られず、じゃあ、おいしいドーナツショップは?と聞いたら、即座に3店の名があがった。
 アメリカ人がよくジョークにする警察官とドーナツの深い仲は神話ではなく現実だったのだ。
 警察官の隣でビデオをまわしていたカメラマンはやっぱり、警察官と一緒だと、パワフルになった気がするなあ、などと喜んでいたが
中からではドアが開かない後部の容疑者席に乗せられた私にとっては、あまり気分のよいパトロールではなかった。
 

2009年8月9日日曜日

本当は恐ろしいアメリカの真実



 アメリカの大統領選の経緯もあって、予定より遅れてしまった新刊がようやく講談社から出版された。タイトルは「本当は恐ろしいアメリカの真実」。出版社の発案で、最初はちょっと「恐ろしい」タイトルでは、と思ったのだが、このところのアメリカの国内の動きをみると、確かに、間違いなくアメリカは恐ろしいことになっている。
 革新政権、しかも黒人大統領の誕生から数ヶ月、ブッシュ政権下の8年間の安住で牙を錆びさせていた保守派、人種差別主義者、キリスト教右派の溜まった鬱憤がここに来て爆発したようで、アメリカ人の対立、分裂は急速に悪化、いまでは内戦さながら。
 もっかの問題の焦点は健康保険制度改革で、真実を探れば、国民に高い保険料をふっかけながらいざ病気になると難癖をつけて医療費支払いを拒否するという詐欺商法で巨額の富を蓄えてきた営利の健康保険産業が、現状を変えられたくないから、豊富な資金を投じて保守派の政治家を動かし、世論操作しているのは見え見えだ。
 そら恐ろしいのは、「政府支給の健康保険は、高齢者を早死にさせ、中絶を促進させるための政府の陰謀」、「公的保険の導入を許せばアメリカは社会主義国に変えられてしまう」といった、他のどこの国でもアホかと一蹴されるような脅しの論理を間に受けるアメリカ人の単純さと知能程度の低さ。
 アメリカの大企業や富裕層は、巧妙な屁理屈で、本当は貧富の差の対立を、イデオロギー的、または宗教的な対立にすり替えることにかけては天才的なのだ。
 保守派は草の根運動にみせかけたプロパガンダ戦略で、健康保険問題をめぐる市民討論会は保守派が討論会妨害のために派遣するエセ市民に乗っ取られ、健康保険改革に賛成の議員は、暗殺の脅迫状を受けたり、似顔絵の立て看を縛り首にされたり。実際に暴徒に暴力を振るわれた民主党議員もいる。アメリカの民主主義は臨死状態だ。
おかげで本当は公営健康保険制度で最も助かるはずの庶民や、いままで政府支給の健康保険である高齢者向け公的保険メディケアなどの恩恵を受けてきた高齢者たちの多くが、健康保険改革に及び腰になっている。
 オバマ大統領に関してもフォックス系のテレビや保守派のラジオトークショーなどではヒトラーや悪魔並みの扱い、または昔ながらの人種主義者の表現でモンキーにたとえられることが多くなってきた。
 アメリカをユナイテッドしたいと訴えて当選したオバマ大統領だが、残念なことに、かえって白人、保守派の恨み憎しみを募らせ、アメリカは不穏な暗雲に包まれてしまった感。
 ・・というわけで、保守革新の対立、人種間の対立、宗教上の対立、アメリカの分裂の根底にある問題を探ったのが今回新刊発売された拙著。
 アメリカ・バッシングではなく、アメリカに憧れ、渡米した私が観察、取材、考察した素顔のアメリカの紹介です。ご一読の上、ご感想を。