Welcome to Mindful Planet

2009年8月9日日曜日

本当は恐ろしいアメリカの真実



 アメリカの大統領選の経緯もあって、予定より遅れてしまった新刊がようやく講談社から出版された。タイトルは「本当は恐ろしいアメリカの真実」。出版社の発案で、最初はちょっと「恐ろしい」タイトルでは、と思ったのだが、このところのアメリカの国内の動きをみると、確かに、間違いなくアメリカは恐ろしいことになっている。
 革新政権、しかも黒人大統領の誕生から数ヶ月、ブッシュ政権下の8年間の安住で牙を錆びさせていた保守派、人種差別主義者、キリスト教右派の溜まった鬱憤がここに来て爆発したようで、アメリカ人の対立、分裂は急速に悪化、いまでは内戦さながら。
 もっかの問題の焦点は健康保険制度改革で、真実を探れば、国民に高い保険料をふっかけながらいざ病気になると難癖をつけて医療費支払いを拒否するという詐欺商法で巨額の富を蓄えてきた営利の健康保険産業が、現状を変えられたくないから、豊富な資金を投じて保守派の政治家を動かし、世論操作しているのは見え見えだ。
 そら恐ろしいのは、「政府支給の健康保険は、高齢者を早死にさせ、中絶を促進させるための政府の陰謀」、「公的保険の導入を許せばアメリカは社会主義国に変えられてしまう」といった、他のどこの国でもアホかと一蹴されるような脅しの論理を間に受けるアメリカ人の単純さと知能程度の低さ。
 アメリカの大企業や富裕層は、巧妙な屁理屈で、本当は貧富の差の対立を、イデオロギー的、または宗教的な対立にすり替えることにかけては天才的なのだ。
 保守派は草の根運動にみせかけたプロパガンダ戦略で、健康保険問題をめぐる市民討論会は保守派が討論会妨害のために派遣するエセ市民に乗っ取られ、健康保険改革に賛成の議員は、暗殺の脅迫状を受けたり、似顔絵の立て看を縛り首にされたり。実際に暴徒に暴力を振るわれた民主党議員もいる。アメリカの民主主義は臨死状態だ。
おかげで本当は公営健康保険制度で最も助かるはずの庶民や、いままで政府支給の健康保険である高齢者向け公的保険メディケアなどの恩恵を受けてきた高齢者たちの多くが、健康保険改革に及び腰になっている。
 オバマ大統領に関してもフォックス系のテレビや保守派のラジオトークショーなどではヒトラーや悪魔並みの扱い、または昔ながらの人種主義者の表現でモンキーにたとえられることが多くなってきた。
 アメリカをユナイテッドしたいと訴えて当選したオバマ大統領だが、残念なことに、かえって白人、保守派の恨み憎しみを募らせ、アメリカは不穏な暗雲に包まれてしまった感。
 ・・というわけで、保守革新の対立、人種間の対立、宗教上の対立、アメリカの分裂の根底にある問題を探ったのが今回新刊発売された拙著。
 アメリカ・バッシングではなく、アメリカに憧れ、渡米した私が観察、取材、考察した素顔のアメリカの紹介です。ご一読の上、ご感想を。

0 件のコメント: